【主査】西村宏昭(京都大学防災研究所)

【活動期間】2018年4月~2020年3月(予定)

【研究会設置の背景】
風工学会会員の減少傾向が続いている。風工学に対する関心が薄れているのが大きな原因である。大学においては耐風構造の講座が少なくなっており,風工学の知識の普及が底辺から進まない。実務面においても耐風構造は特殊な専門領域であり,専門家のみが問題を解決すれば良いという風潮が広がっている。これに歯止めを掛けるためには,底辺を広げる方策しかないと考えられる。そのため,教育課程に耐風構造のキャリクラムを導入しやすくする。最終的には,単元的な講義用文書資料を整えなくてはならないが,その前身として実験教材を制作する。
耐震構造の分野では,1質点または2質点の簡単な振動模型を手で揺すり,構造物振動の原理を初学者に理解させることなどは広く行われているが,耐風構造の分野ではそうした単純な模型を用いて風が物体に作用する現象を示すことは少なく,観念的な理解の強制に終始する。初学者の興味は物理的な現象から発するものであるから,風に伴う現象を実際に目で見て手で触って,自ら理解することは極めて重要であるに違いない。

【研究会の目標と実施内容】
当研究会では,次世代教育用教材として風洞実験ができる実験装置を試作する。装置は机上に置くことができる程度の大きさ(全長1〜1.5m)とし,送風機と計測機器をセットで開発する。送風機は市販の扇風機に拡散筒と縮流筒を付けた簡易な風洞とする。風量の調整は扇風機に付いている強・中・弱の3段階程度で良い。計測機器はマイコンを中心として,圧力センサー,力センサー,変位センサーなどを組み込めるものとする。これらの開発に関する基本的な技術課題は解決できている。コンピュータ用冷却ファンを用いた小型風洞の制作,マイコンを用いた圧力,力,変位量の測定は実績があるので,拡張・応用は容易である。
高校,大学,一般教養向けそれぞれに必要な計測の目標を決め,風洞の制作と,測定マニュアルの整備,試行実験を行って,充実した教材を作る。成果としての教材は,出前講義や貸し出しなどに利用する。

【活動概要】
 主としてメールで情報交換を行い,年2回の研究会を開催して成果の確認を行う。

【委員構成】
 西村宏昭(京都大学防災研究所)[主査]
 吉田昭仁(東京工芸大学)[幹事]
 木村吉郎(東京理科大)
 中藤誠二(関東学院大)
 野村卓史(日本大学)
 ほか